ふるきよき
タイルコラム
2020年09月17日
街の風景はすぐ変わってしまう。
見慣れた建物がいつの間にか無くなっていたなんてよくあることだ。
耐震基準の低さや老朽化など、取り壊しの理由は様々で仕方がないのだが、
個人的に思いを寄せている昭和な建物が、次々と無くなるのは何とも切ない。
今回紹介する建物は、そんな建て替えラッシュが横行する名古屋に於いて、
今なお現役で活躍する古き良きビルである。
こちら中産連ビルは1963年に中部産業連盟(当時)の研修施設として建てられたとのこと。
連続する窓の形状や配置、ピロティ、写真では見えないが屋上庭園など、とてもユニークである。
設計は岐阜県羽島市生まれの坂倉準三氏で、1930年代に渡仏し、
巨匠ル・コルビュジエに師事していた建築家だ。
この建物もコルビュジエが提唱する「近代建築の5原則」の要素が感じられ、
ファンには垂涎ものだろう。ちなみに坂倉氏を知ったきっかけは、
東京都南青山にある岡本太郎邸を建てたのも彼だったからである。
二人は1930年代の同時期に渡仏しており、そこで繋がったと思われる。
外壁には鮮やかな色幅を纏った、窯変釉の小口タイルが張られている。
1960~70年代の建物には小口や二丁掛けのタイルが多く見られ、
その形状がノスタルジックな雰囲気を醸し出す。どこで製作されたタイルかは不明だが、
太郎さんが太陽の塔で使用したタイルは信楽の某製陶所のタイルなので、
湿式の厚掛け窯変釉からしてここも同じ窯元かもと妄想したりもする。
いつまでも残ってほしいと思う建物のひとつだ。